
こちらにきてから毎日毎日お散歩の途中ですれ違う人がいます。
ちょうど5年くらい前に初めてすれ違ったのでしょうか・・・
その人は半身に麻痺をかかえ、おぼつかない足取りで一歩一歩地面を踏みしめるように歩いていました。
とてもとてもゆっくりのスピードで。
私は犬を連れて散歩をしていたので、その横をすばやく通り過ぎていました。
こんなに人通りの多いところを、何も歩かなくたって・・・
と、当時はそんなことを考えていました。
それから5年。
毎日毎日、あるときは遠くから、あるときはすれ違い、あるときは追い越し・・・
そんな感じでその人を見ていました。
ゆっくりゆっくりした歩みが、次第に力強く早くなってきました。
1年、また1年と年を重ねるごとに、春が来てまた新しい1年が始まるごとに、
その人の歩みはどんどん力強くなっていきました。
そして5年たった今・・・
私は肩に故障をかかえてしまい、リードをひく犬の散歩がかなり厳しくなったため、短時間のお散歩に切り替えていました。
その人とは時間帯が合わなくなり、ほとんど出会うことなく数ヶ月が過ぎました。
そんなある日、運転中の車の中から何ヶ月ぶりかにその人を見たのです。
雪の道を、もうほとんど普通の人と同じような速さで歩いていくその人。
以前ついていた杖も、今は持っていません。
私はしばし、じーーっとその人の姿を車の中から見ていました。
5年前、おぼつかなかった一歩は、今ではたくましく力強い一歩に変わっていました。
そうなるまでの5年間。
ただ歩くこと、それだけがどれほどその人にとっては大きな大きなことだったのか・・・
今、颯爽と歩いていくその人の後姿を見ながら、静かな感動があふれてきました。
大きな壁にぶつかったとき、嘆いた後でも前でもいい。
とにかく顔をあげて、一歩を踏み出していこう。
その人が5年前踏み出したように。
今はおぼつかなくても、
春がきて、冬が来て、また次の春がくれば、
きっと力強い一歩に変わっていることでしょう。
行き詰ったときは、その人の歩みを思い出します。
ただ、前だけを向いて歩く。
ketui no asa ni